横浜地方裁判所 昭和52年(ワ)109号 判決 1978年7月10日
主文
被告らは各自原告に対し、金一四万四三五〇円及び内金一二万四三五〇円に対する昭和五一年一月三〇日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを二分し、その一を被告ら、その一を原告の負担とする。
事実
第一双方の申立
一 原告
(一) 被告らは各自原告に対し、金二六万一四三〇円及び内金一九万一四三〇円に対する昭和五一年一月三〇日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。
(二) 訴訟費用は被告らの連帯負担とする。
(三) 仮執行の宣言。
二 被告ら
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。
第二双方の主張
一 請求原因
(一) 事故の発生
日時 昭和五〇年一二月二四日午後七時二〇分頃
場所 横浜市神奈川区白幡仲町八番地先交差点
加害車 大型貨物自動車(横浜一一か六〇六一号)
運転者 被告高木
被害車 普通乗用自動車(横浜五五な五六一六号)
運転者 原告
態様 被害車が、本件事故地点の交差点に大口方面から進入してその中央付近まで進行したところ、左方(第二国道方面)から同交差点に進入して来た加害車に衝突され、原告が傷害を受け、被害車が破損した。
(二) 責任原因
1 本件事故は、被害車が本件事故地点の交差点にさしかかつたところ、進行方向の信号機が無燈火であつたので停止線上で停止し、青色信号になつて交差点に進入したところ、加害車を運転していた被告高木が、信号を確認しないで交差点に進入した過失によつて生じたものである。
2 被告会社は、加害車を所有して運行の用に供していたものであり、又本件事故は被告会社の従業員である被告高木が、被告会社の業務執行中に前記過失によつて生じたものであるから、人損については自賠法三条、物損については民法七一五条一項により責任がある。
3 被告永田は、被告会社の代表取締役として被告会社に代りその従業員を監督すべき地位にあるものであるから、被告高木の前記過失によつて生じた損害につき、民法七一五条二項により責任がある。
(三) 損害
1 治療費等
原告は、本件事故により腰部捻挫の傷害を受け、入院一二日、通院実日数四日の加療を要した。
(1) 治療費 金九万三三七五円
(2) 付添看護費 金二万四〇〇〇円
一日金二〇〇〇円の割合による一二日分
(3) 入院雑費 金六〇〇〇円
一日金五〇〇円の割合による一二日分
(4) 通院費 金五〇〇〇円
2 慰藉料 金七万円
3 財産損害 金二四万七七〇〇円
(1) 車両修理代 金二一万九七〇〇円
被害車の破損による修理費
(2) 車両運搬代 金二万八〇〇〇円
被害車をレツカー車で運搬した費用
(四) 損害の填補
原告は、自賠責保険から金二五万四六四五円の支払を受けた。
(五) 弁護士費用 金七万円
(六) よつて被告らは各自原告に対し、金二六万一四三〇円及び内金一九万一四三〇円に対する不法行為後の昭和五一年一月三〇日から支払ずみにいたるまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
(一) 請求原因(一)の事実のうち、被害車が破損し、原告が傷害を受けたことは不知、その余の事実は認める。
(二) 同(二)につき、
1の事実のうち、信号機が作動したとの点は否認するが、被告高木に過失があつたことは認める。
2の事実は認める。
3の事実のうち、被告永田が被告会社の代表取締役であること、被告高木が被告会社の従業員であることは認めるが、その余の事実は否認する。
(三) 同(三)の事実のうち、1の(3)は認め、3の(1)、(2)は否認、その余は不知。
(四) 同(四)の事実は認める。
(五) 同(五)の事実は不知。
(六) 同(六)は争う。
三 抗弁
本件事故地点の交差点は、信号機が設置されて交通整理が行われているが、事故当時信号機が故障して全く作動していなかつた。
被告高木は、加害車を運転して第二京浜国道方面から菊名方面に向けて進行中、本件事故地点の交差点の手前二〇メートル位のところで前車が一時停止してから発進するのを見て、被告高木も一時停止したが、信号機が全く明滅しないので、左右を確認して交差点に進入し、時速二〇キロメートルに達したところで、徐行もしないで右側から交差点に進入してきた被害車が加害車に接触したものであつて、原告にも過失があるから賠償額を算定するにつき斟酌すべきである。
四 抗弁に対する認否
抗弁事実は否認する。
第三証拠〔略〕
理由
一 請求原因(一)の事実のうち、被害車が破損して原告が傷害を蒙つた点を除くその余の事実は当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一、第三、第四号証、証人上野摠一の証言によつて成立を認める甲第二号証、第五号証の一ないし四、原告本人尋問の結果によると、被害車が破損し、原告が腰部捻挫の傷害を蒙つた事実が認められる。
二 責任原因
本件事故は被告高木の過失によつて生じたこと、被告会社は加害車の運行供用者であり、又被告高木の使用者であつて本件事故は被告会社の業務執行中に生じたものであることは当事者間に争いがないので、被告高木は民法七〇九条により、被告会社は人身損害につき自賠法三条、物損につき民法七一五条一項により、それぞれ原告に生じた損害を賠償する責任がある。
被告永田は被告会社の代表取締役であること当事者間に争いがないので、他に資料のない本件においては、被告永田が被告会社に代つて被告高木を監督すべき者であつたことが推認されるので、被告永田は民法七一五条二項により原告に生じた損害を賠償する責任がある。
三 損害
(人身損害 金一七万四三七五円)
1 治療費 金九万三三七五円
前掲甲第三、第四号証に原告本人尋問の結果によると、原告は本件事故による傷害の治療のため、恩賜財団済生会若草病院に昭和五〇年一二月二七日から昭和五一年一月七日まで一二日間入院し、その後四日間(実日数)通院し、その治療費として金九万三三七五円を要したことが認められる。
2 入院雑費 金六〇〇〇円
当事者間に争いがない。
3 通院交通費 金五〇〇〇円
原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によつて認める。
4 慰藉料 金七万円
前認定の原告の傷害の程度、入、通院の期間等により、原告の慰籍料は金七万円と認めるのが相当である。
なお、原告は金二万四〇〇〇円の付添看護費の損害を受けたと主張するけれども、これを認めるに足りる証拠はない。
(財産損害 金二四万八七〇〇円)
前掲甲第一、第二号証、甲第五号証の一ないし四に証人上野摠一の証言、原告本人尋問の結果によると、本件事故により被害車は破損し、その修理費として金二二万七〇〇円、レツカー車による運搬のため金二万八〇〇〇円を要したことが認められる。
四 過失相殺
前掲甲第一、第二号証、証人上野摠一の証言と原告本人尋問の各一部に弁論の全趣旨を総合すると、本件事故地点の交差点には信号機が設置されていたが、本件事故当時信号機が故障して作動していなかつたこと、被害車は大口方面から白幡西町方面に向け、加害車は第二京浜国道方面から菊名方面に向けて進行し、本件事故地点の交差点にさしかかつたこと、原告、被告高木はともに信号機が故障していることに気付き、一時停止した後交差点に進入し、ともに時速一五ないし二〇キロメートルの速度のときに交差点の中央付近で加害車の右前部と被害車の左前部が衝突し、加害車は衝突地点付近に、被害車は衝突地点の一・二メートル先で停車したこと等の事実が認められる。
証人上野摠一の証言と原告本人尋問の結果には、被害車の進行方向の信号は青であり、加害車は時速四〇キロメートルの速度で交差点に進入したとの供述部分があるけれども、信号機が青であつたとの点についてはこれと矛盾する供述部分があり、又右速度の点については前認定の加害車の停車位置から考えてともに採用できず、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。
右認定の事実によると、本件事故はいわゆる交差点における出合頭の衝突事故であり、被害車、加害車ともに一時停止、徐行義務を守り、その衝突地点も交差点の中央付近であつたこと等の事実によれば、本件事故の過失割合は、原告五、被告高木五と認めるのが相当である。
そこで前認定の原告の損害から過失相殺すると、人身損害は金八万七一八七円(円以下切捨)、財産損害は金一二万四三五〇円となる。
五 填補
原告が自賠責保険から金二五万四六四五円の支払を受けたことは当事者間に争いがないので、原告の前記人身損害は全部填補された。
六 弁護士費用
本件訴訟の請求額、認容額、難易等諸般の事情を総合し、弁護士費用は金二万円が相当である。
七 以上のとおり、原告の本訴請求は、財産損害金一二万四三五〇円及びこれに対する不法行為後の昭和五一年一月三〇日から支払ずみにいたるまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、弁護士費用金二万円の支払を求める限度において理由があるので正当として認容し、その余は理由がないので失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を適用し、仮執行の宣言は相当でないので却下し、主文のとおり判決する。
(裁判官 菅原敏彦)